背中の痛み
2020/11/13
背中の痛み
背中の痛みとひとことで言っても、胸の背中側が痛むものや、みぞおち周辺の背中側が痛むものなど広い範囲に及びます。背中のこりや筋肉痛などからくるものが多く、大半は気にしなくてよい症状ですが、なかには脊椎や内臓の疾患によるものなど、重大な疾患に繋がるものもあります。
日常生活から考えられる原因
1長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の緊張と疲労
長時間座ってパソコンに向かっていたり、立ちっぱなし、中腰など、無理な姿勢を続けると背中の筋肉が緊張します。そして時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなって背中にこりや痛みを引き起こします。
2過剰な運動や無理な負担
過度の運動によって筋肉が疲労し、緊張を強いられた背中の筋肉が痛みを引き起こします。また、背中に無理な力がかかるような動作を行うと、急性の背部痛を招くことがあります。
3背中の痛みの原因となる主な疾患
背中の痛みを引き起こす代表的な疾患は、椎間板へルニア、変形性脊椎症、頸椎(けいつい)の損傷(むち打ち症)など整形外科の領域の疾患が大半です。結石や胆石症、膵臓の疾患や骨粗しょう症なども背中の痛みを引き起こします。他には、風邪やインフルエンザ、腎盂腎炎(じんうじんえん)、帯状疱疹(帯状ヘルペス)など細菌やウイルスの感染によって背中の筋肉が痛むこともあります。さらに心筋梗塞や狭心症など心臓疾患の発作では、胸に起こる痛みが背中にまで及ぶことがあります。
背中の痛みをともなう疾患
1椎間板ヘルニア
骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで起こります。首から背中、腰にかけての痛みや足指のしびれや、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状です。若い人にも比較的多く、動くと背中から腰、足の激痛とつっぱりなどで動けなくなることもあります。
2頸椎捻挫(けいついねんざ・むち打ち症)
クルマの追突やスポーツの激しい衝突などで、首がのけぞり、頸椎が捻挫している状態でむち打ち症とも呼ばれます。首が動かしにくい、首や肩が痛むなどの症状があらわれ、損傷がひどい場合には痛みが治まっても後遺症として、頭痛や吐き気、耳鳴り、倦怠感に悩まされることも少なくありません。
3変形性脊椎症
長年の負担によって椎間板が変性し、神経の通り道である背骨の脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こります。安静時には症状が軽い場合が多いのですが、歩き続けると下肢のしびれや痛みが生じて動けなくなることもあります。立ち止まって休憩をとると症状が緩和し、歩き出してしばらくすると、また悪化するといった状態を繰り返すのが特徴的です。
4骨粗しょう症
骨量が減少して、骨がスカスカの状態で、日常のささいな動きで小さな骨折を起こしやすくなったり、自分の体重が支えきれず圧迫骨折を起こしたりする疾患です。脊椎がもろくなることで脊椎を構成する骨が変形や骨折し、神経を刺激したり、圧迫することで動作のたびに痛みが起こり、立ったり座ったりすることさえできなくなるほど悪化します。
5急性腎盂(じんう)腎炎
腎盂や腎の組織が、細菌に感染して起こります。尿中の白血球が増えるために尿のにごりが生じる他、悪寒をともなう高熱、血尿、背中から腰にかけての痛みや吐き気、嘔吐などがあらわれます。さらに、排尿時の痛みや排尿の回数が増えることもあります。女性に多く、妊娠中に多いのも特徴です。
6帯状疱疹(帯状ヘルペス)
帯状疱疹は、体の中に潜伏していた水ぼうそうのウイルスが再び活性化して起こります。激しい痛みをともなう小さな水ぶくれが体の片側の胸部の肋間神経に沿ってあらわれます。水ぶくれはお腹や背中にできることもあります。水ぶくれは3週間ほどで治まりますが、帯状疱疹が治っても、背中、胸、顔などに神経痛が残ることがあります。この疾患・症状に関連する情報はこちら。
7腎臓結石・尿管結石
シュウ酸や尿酸などの塩類が結晶化して石のように固まり、腎臓や尿管に留まる疾患です。腎臓結石では背中、わき腹や下腹部に鈍痛があらわれます。尿管結石では冷や汗や吐き気をともなうほどの激しい痛みが、背中や腹部にあらわれます。その他、血尿や尿のにごり、残尿感などを引き起こします。
8胆石症
脂質の消化を助ける胆汁が固まり、胆のう、胆のう管、総胆管に胆石ができるとみぞおち辺りの痛みが急激に強くなります。右肩や背中に響くような痛みが出るのが特徴で、発熱、吐き気・嘔吐もみられます。また、胆汁の流れが悪くなり、黄疸が起きて顔が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりします。中年以降の肥満の人に起こりやすい傾向があります。
9狭心症・心筋梗塞
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送り込む血管が動脈硬化によって狭くなり、血流が不足して心臓が一時的に酸素欠乏状態に陥る疾患です。呼吸困難、動悸といった発作が起こります。また、血管に血の塊が詰まって血管が完全に閉塞し、血流が途絶える心筋梗塞でも、不整脈による動悸や息切れが起こることが多くあります。どちらの疾患も、胸に痛みが起こり、左肩や背中にまで痛みが広がることもあります。
日常生活でできる予防法
1姿勢に気をつける
同じ姿勢で長く立ち仕事する調理台やアイロン台などは、前屈みにならないよう補助台を置くなどして自分に合った高さに調節する工夫をしましょう。また、パソコンなどのデスクワークで座り続けることの多い人はいすに深く座り、背骨を伸ばし、膝、足首が90度になるように高さを調節するなど、姿勢に気を配りましょう。また、寝るときの高すぎる枕も背中の筋肉に負担をかける原因になりますので、注意しましょう。
2肩と背中の筋肉を鍛える
日頃から、腹筋と背筋を鍛える運動を心がけましょう。仰向けに寝た状態で腰の下にたたんだタオルを当て、自転車を漕ぐように空中で足を回す動作は、腹筋と背筋を同時に鍛えることができます。ただし、痛みが強いときは決して無理をしないことが大切です。
3一定時間ごとにストレッチをする
立ち仕事や座り仕事が続くと、背中の筋肉が緊張してこりを感じます。手を上にあげて体を伸ばしたり、肩や首を大きく回すなど、簡単なストレッチを数時間ごとに行うことで、筋肉の緊張がやわらぐので続けてみましょう。
4ぬるめのお風呂にゆっくりとつかる
40℃前後のぬるめのお湯にゆっくりとつかることで、血行を促進して背中の筋肉の疲れやこりを改善することができます。入浴中に背中を伸ばしたりすると、さらに血行改善の効果があります。
対処法
1冷やして炎症を抑える
過激な運動などで背中に急激な痛みを感じた直後や、痛みのある部分が熱を持っていると感じるときは冷やします。冷却パックやエアゾール剤、冷やすタイプのハップ剤を利用すると良いでしょう。
2背中を温めて血行を良くする
背中の痛みの発症直後は炎症を鎮めるために冷やしますが、炎症が軽減したら血行を良くして回復を促すために、ホットパックや使い捨てカイロなどで腰を温めましょう。ぬるめのお湯にゆっくりとつかり、しっかり温めるのも効果的です。また、慢性的な腰痛を解消したいときも温めて血行を良くすると効果があります。
3ほど良い刺激のマッサージを受ける
ほど良いマッサージは、血行を良くして回復を促す効果があります。周囲の人にマッサージをしてもらう場合や、自分で行う場合は、さする、軽く押す、もむ程度の軽い刺激に留めておくのがいいでしょう。痛みを感じるほどのマッサージは、筋肉によけいな緊張や局所的な疲労を与えたり、小さな傷をつけてしまうことがあります。
4市販の薬を使う
背中のこりによる炎症と痛みを抑えるには、鎮痛消炎成分のインドメタシンやフェルビナクなどを配合した外用鎮痛消炎薬が効果的です。痛みがより強いときには内服薬の消炎鎮痛薬で一時的に痛みをブロックしましょう。また、ビタミンB1、B6、B12が配合されたビタミン剤は、体の中からこりを緩和する効果があります。
5病院で診察を受ける
患部が腫れて熱を持ち痛みが続くときや腰や足のしびれをともなうとき、むち打ち症で首や肩が痛むときなどには、整形外科などで早めに診察を受けましょう。また、胸の痛みや腹痛をともなう背中の痛みは内科、婦人科、泌尿器科などの疾患が隠れている可能性があります。一度、主治医に相談するようにしましょう。
プチメモ背中や腰に負担をかけない家事のコツ
掃除や洗濯、料理など家事をしているときの自分の姿勢を思いだすと、中腰になっていることが多くありませんか?中腰は、背中や腰に大きな負担をかけるので、背中や腰の痛みを引き起こす大きな原因になっています。冷蔵庫の下段から食品を取り出すときはひざをついて行う、掃除機をかけるときは柄の長さを調節するなど、体への負担を軽減できるよう、少し工夫をしてみるといいでしょう。
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